スイスとフランスにまたがる風光明媚な湖、レマン湖。
そのスイス側の湖のほとりに何気ないたたずまいで建つ一軒の小屋のような家。
それは近代建築の巨匠、建築家ル・コルビュジエが両親に捧げた「小さな家」という最高のプレゼント。
ユネスコの世界遺産にも登録されている小さな名建築を紹介します。
レマン湖畔の小さな家「湖の家」の概要と特徴
レマン湖畔の小さな家は「湖の家(ヴィラ・ル・ラク=Villa Le Lac)」「母の家」などと呼ばれています。
建造は1923~24年。ル・コルビュジエが36才のとき。両親のための家として設計。
ル・コルビジエの父ジョルジュは1926年に亡くなりましたが、母マリーは1960年に100歳で亡くなるまで、30年以上の長きにわたり、この家に住み続けました。
場所は、レマン湖畔の北東部、風光明媚な小村「コルソー(Cursor)」。
イギリスの有名な喜劇俳優、チャーリー・チャップリンが別荘を持った町、ヴヴェイ(Vevey)から近く、ヴヴェイ駅から徒歩で約20分弱の場所にあります。
その周辺のラヴォー地区は白ワインの生産地で、ぶどう畑全体がユネスコの世界遺産になっています。
近くに美しい山々と湖、美味しいワインのある最高の土地。
ル・コルビジェは、まず家の図面を練り上げてから、それが収まる美しい眺望の敷地を探して、その地に決めたと言われています。
幅4m、長さ16m、延べ床面積は約60㎡ほどの小さな家は、一見、とても質素な外観。
しかしながら、寝室、居間などのスペースが緩やかにつながり、小さいながらも機能的な住宅でした。
近代建築の原点となったコルビュジェの建築エッセンスが詰め込まれた家なのです。
小さな家(湖の家)の図面、平面図、3D立体図
上の図面(観光パンフレット)以外で一つ紹介します。
WikiArquitecturaという建築版のウィキペディアのようなサイトで、建築写真やプラン(PLAN)が掲載されています。3Dなどで全体構造がつかみやすいかと思います。
https://en.wikiarquitectura.com/building/villa-le-lac/(ページの右上に図面) このサイトでは、他のコルビュジエ建築のプロジェクトも掲載されています。 ≫ WikiArquitecturaのル・コルビュジエ作品集はこちら |
小さな家(湖の家)の外観と庭
建物内のドア(上の写真)から見たのが下の写真(庭)。
庭の湖側には有名な「ピクチャーウィンドウ」。
天気の良い日には、コルビュジエの母マリーはこのベンチに座り、レマン湖の美しい景色を楽しんでいたのだろうか・・
「ピクチャーウィンドウ(絵のような窓)」
地下室の浮力のせいで壁にひびが入ったため、湖側ファサードは後の1931年頃からアルミ板で覆うようにした。
家から見るレマン湖の景色。
レマン湖は、スイスとフランスにまたがる、中央ヨーロッパで2番目に大きい三日月型の湖。
約1万5千年前の氷河期の後、ローヌ地方の氷河によって削られてつくられた淡水湖。
レマン湖に生息するパーチ ( Filet de Perche)という白身の小さな淡水魚が、地元の名物料理にもなっている。
透明度が高いレマン湖の水。
屋上に上る外階段の上部に、愛犬が湖の景色を見わたせるような台が設けられているのが面白い。
緑に覆われた屋根は少し傾斜がつけられ、水はけを良くしてあるそうです。
この屋根は、屋上緑化のはしり。
当時、ル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」の一つ、「屋上庭園 」の概念が取り入れられています。
小さな家(湖の家)の内観(内部)
1階
11mにおよぶ横長の連続窓からは、明るい日光が差し込み、船の窓から見るかのような景色が望めます。
幅4m、長さ16mの家の中に11mの窓を設けるというのは1920年代当時、画期的なことでした。
それまでの伝統的なヨーロッパの住宅では、このような大きな窓を設置しているところはなく、当時、発展したガラス製造の最新技術が可能にした、時代の産物と言えます。
(当時最先端をいった他の大窓の例は、コルビュジエの「サヴォア邸」やミース・ファン・デル・ローエ設計「トゥーゲンハット邸(チェコ)」など、いずれもお金持ちの豪邸に採用されていた)
内装は取り立てて飾ることはされていないが、湖の景色が最高のインテリアになっていた。
湖側のテーブルは可動式で、生活の用途に合わせて窓下のレールに沿って位置をスライドすることができる。便利で機能的な家具の一つ。
小さな空間を効率的に利用するル・コルビュジエの建築理念が表れています。
客間。収納式のソファベッドや洗面台などが配置されている。
この部屋からここから庭につながり、開放感がある。
キッチン。湖と反対側で道路に面する側。
2階
木の階段を上がって2階へ。
ル・コルビュジエの父ジョルジュや母マリーのために設けられた寝室。
畳3畳分くらいの狭い部屋ですが、空間を最大限生かした設計。
コルビュジエの母マリーは、1960年に100歳で亡くなるまで、30年以上の長きにわたり、この家に住み続けました。
このベッドのシンプルな形は、コルビジェが住んだパリの自宅(ポルト・モリトーのアパルトマン)のベッドを思い起させます。
▼ポルト・モリトーのル・コルビュジエの自宅の本人用のベッド▼
ルコルビジェ:小さな家(湖の家)の入場見学情報
施設側の都合により、開閉館、料金、見学方法は予告なく変わることがあります。
実際の訪問、予約にあたっては、下記の公式サイト等で必ず最新情報をご確認の上、お出かけ下さい。
※開館時間:季節や曜日により異なるため、訪問時期にあわせた情報を公式サイトで要確認
<例年の傾向>
3月~6月下旬:日曜日の午後14-17時頃
7月~8月下旬:金、土、日曜日の11:00-17:00(10月下旬まで)
※料金:大人12スイス・フラン、学生:10スイス・フラン、子供:6スイス・フラン
※団体でない個人訪問の場合事前予約不要
上記以外、原則、閉館(特別見学許可が下りた場合以外は不可)
※上記以外の時期でも12名以上の団体の場合、事前予約により、随時見学可能な場合あり(管理人の都合次第)。
(団体専用予約:120スイス・フラン+人数分の入場料)
一緒に見学できる周辺の観光地
レマン湖畔の小さな家(湖の家)のある場所は、少なからず辺鄙なエリア。
せっかくここまで来たら、周辺の観光地もあわせて見学できたら一石二鳥です。
レマン湖畔のスイス側には、その他にも、白ワインの生産で知られる世界遺産のラヴォー地区。
イギリスの喜劇俳優、チャールズ・チャップリン、ヴヴェイ、モントルーといった観光があります。
現地オプショナルツアーの例
下記は秋冬シーズンは休止
ヴヴェイ、ラヴォー、モントルー1日観光ツアー<ジュネーブ発>
ヴヴェイ、ラヴォー、モントルー1日観光ツアー<ローザンヌ発>
ジュネーブ市内観光&レマン湖クルーズ<5~10月/ジュネーブ発>
小さな家(湖の家)の場所、行き方、アクセス
所在地:Route de Lavaux 21,1802 Corseaux スイス
※スイスのジュネーブ空港やローザンヌを基点に列車利用がおすすめです。
(ジュネーブ空港からヴヴェイ駅まではスイス国鉄SBBで約1時間)
国鉄SBB「コルソー駅(Corseaux-Cornalles,)」から徒歩で約1.0km、徒歩で約15分
または
国鉄SBB「ヴヴェイ駅(Gare de Vevey)」から徒歩で約1.3km、徒歩で約18分
※列車の発着頻度や町の規模(店やレストランの多さ)から、ヴヴェイ駅利用が便利です。
関連情報
レマン湖畔の小さな家(湖の家) 公式サイト
周辺の観光情報
世界遺産ラヴォー地区のブドウ畑
スイス観光局
よろしければ、こちらの記事もどうぞ。
-
関連記事ル・コルビュジエの建築作品15選(フランス、スイス、インド、日本)、特徴や世界遺産リストも!
ル・コルビュジエが生涯で手がけた約80~90のプロジェクトで代表的なものをまとめています。 フランスを中心に、スイス、インド、日本の4か国で14か所。 目次の各モニュメントをクリックすると、該当項目ま ...
続きを見る