フランス ル・コルビュジエ

ポルトモリトー(ナンジェセール エ コリ通り)集合住宅、コルビュジエの自宅訪問体験《世界遺産》

建築家ル・コルビュジエが生涯を閉じる77歳まで約30年間を過ごしたパリの自宅兼アトリエ、ポルト・モリトーの集合住宅。

ナンジェセール・エ・コリ通りのアパートとも呼ばれるます。

ここを訪れれば、コルビュジエをより身近に感じる機会となること間違いなし!

その訪問体験、見学情報などについてまとめました。

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ポルトモリトーの集合住宅:概要

工期:1931-1934年

ル・コルビュジエが生涯を閉じる77歳までの約30年間、妻イヴォンヌと住んだ自宅兼アトリエです。

パリの東(16区)のブローニュの森の南側、フランスのプロサッカーチーム「パリ・サンジェルマン」のホームスタジアムの近くにあります。

ポルト・モリトーの集合住宅(Immeuble locatif à la porte Molitor, Paris)」は、コルビュジエの自宅兼アトリエとして「ナンジェセール・エ・コリ通りのアパート(Immeuble Nungesser et Coil L’appartement-atelier de le corbusier)」とも呼ばれます。

有名なサッカースタジアムが近くにあるその周辺。試合日こそ、サポーターたちで賑わいます。

もとは閑静な住宅街。ル・コルビジェが設計を依頼された当時、この地域は未開発地域の一部。

7階建の集合住宅は各階2戸のゆったりとした広さの住まい。コルビュジエの自宅兼アトリエも98㎡ほどの広さがあり、セントラル・ヒーティングや洗濯や乾燥室など、当時最新の設備が完備された画期的な、最先端アパートでした。

設計にあたり、開発業者から、コルビジエが自由に設計してよい代わりに、入居者を自分で探すことを条件に託されたとも伝えられます。

しかしながら、世界恐慌のあおりを受けてなかなか購入者は出ませんでした。ル・コルビュジエは自らの友人に部屋の購入をしてもらい、窮地を脱したと言われます。

ル・コルビュジェはこの住まいを愛し、生涯手放すことはありませんでした。

ポルト・モリトーのル・コルビジェの自宅:図面(プラン)

寸法入りではありませんが、ル・コルビュジエ財団のホームページに添付された下記のPDF資料(フランス語)に載っています。

財団ホームページ:図面プランは8ページ目

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ポルトモリトーのアパルトマン:外観

▲ナンジェセール・エ・コリ通り。

通りを挟んだ反対側は、スタッド・ジャン=ブーアン(Stade Jean-Bouin)のラクビースタジアム。

プロサッカーのパリ・サンジェルマンのホームスタジアムはその先。ル・コルビュジエのアパートは右側の緑色建物の先です。

▲ポルト・モリトーの集合住宅。ル・コルビュジエはこの建物全体を設計し、自宅兼アトリエをこの最上階に設けました。

観光地でなく、スタジアムで試合が行われるとき以外、周辺はひっそりとしています。

1930年頃、石造りのクラシカルな古典様式の建物が主流を占める中、「新しい生活をかなえます」と宣言。

鉄筋コンクリートやガラスを多用した理想的な設備を整えた建物として完成しました。

ル・コルビュジエが設計した集合住宅は、ジュネーヴの「イムーブル・クラルテ」、マルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」など、丁寧にリノベーションをしながら、60~70年経った現在も大切に利用されているケースが多くあります。

フランスでは建物を壊さず、しっかり維持してゆく文化が根づいていると言えます。

▲「コルビュジェのアパートは7階。この左側へ。」のサイン。

この集合住宅の6階までは、現在も人が住んでいます。

建物内部に入ると当時からのエレベーターで行けるのは6階まで。そこから上の7階は、ル・コルビュジエのスペシャル・ゾーンです。

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ポルトモリトーのアパルトマン内観(内部)

内部見学は、コルビュジエ財団に事前予約が必要です。

早速、内部へ入ると、まずは目に飛び込んでくるのは、広い絵画制作用のアトリエ。

▲アトリエには、絵画作品で埋め尽くされていた当時の写真が残されていました。

近代建築の父として鉄筋コンクリート造に象徴されるコルビュジエ。

内装の大部分は塗装仕上げですが、アトリエ部分は煉瓦、石積みの壁面を露出させています。この部分は妻イヴォンヌからのアイデアが取り入れられたと言われます。

アトリエはヴォールト天井で、高窓から光が差し込み、開放感があります。

そして、コルビュジエは絵を描くことについて、次のような言葉を残しています。

Every day of my life has in part been devoted to drawing. I have never stopped drawing and painting, seeking, where I could find them, the secrets of form.(簡訳:私の人生の毎日の一部は、描くことに捧げられてきた。私は決して絵を描くこと、探し求めることを止めない。それは私が見つけることができたもの、形の秘密である。)
英文出典:当施設のリーフレット LE CORBUSIER The Studio-Apartment より

建築家としてでなく、画家として生涯をつうじて絵を描き続けたコルビュジエは、ここ設けたアトリエをもっぱら絵画制作用に使用していました。

▲コルビュジエの作業机。当時、左側の棚には書類がいっぱい詰まっていた。

その後に設計されたロンシャンの教会やマルセイユのユニテなど、数々の傑作建築のアイディアや図面はここで生まれたのだろうか?

南フランスのカップマルタンの休暇小屋が象徴するように、最小限空間を生み出すコルビュジエにとって、広く、大きな作業スペースは必要ないのかもしれない。

▲リビングルーム。左側奥はキッチン、右側にベッドルームに通じている。弟子の家具デザイナーであるシャルロット・ペリアンの照明も残っている。

▲部屋は東西両方から同時に光が差し、西側の屋外バルコニーからはブローニュの森が一望できます。

中心部からは少し離れた閑静な立地。多少不便でも、コルビュジエはその景色の良さを気に入っていたという。

▲東側はヌンジェセール・エ・コール通りを挟んでラクビースタジアム。開発当時は自転車競技場だった。

▲大理石のテーブルは当時のオリジナル。

▲その他、船室のようなシャワー室など、コルビュジエのアイディアが満載。

▲細い柱で四角い建物を支えるピロティの発想??マットの位置が異様に高い不思議なベッド。

コルビュジエはこの建物を設計する前年(1930年)、南仏出身のイヴォンヌ・ガリと結婚。フランス国籍を取得した。

イヴォンヌが亡くなるまで、このベッドで一緒に寝ていたという。

▲内部はメゾネットタイプの構造で、らせん階段で上階のゲストルームと屋上庭園(サンルーム)につながっています。

▲屋上庭園はさして広さを感じない。しかし、狭い空間の中でも、太陽の光を浴び、くつろげる場所であると感じられた。ここからは現在の新凱旋門が見えた。

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ポルトモリトーの入場見学情報

施設側の都合により、開閉館、料金、見学方法は予告なく変わることがあります。

実際の訪問、予約にあたっては、下記の公式サイト等で必ず最新情報をご確認の上、お出かけ下さい。

営業曜日・時間

開閉館情報、料金、見学方法(財団HPより/フランス語のみ)

以下、財団HPから日本語訳して抜粋

月曜・火曜・金曜 14:00〜18:00(金曜は時期により閉館)
土曜日は10時から13時まで、13時30分から18時まで

人数が多い場合(団体とみなされる場合)、必ず事前予約が必要
(広さとして一度に10名程度が限界)

急な閉館等もあるため、人数が多くない個人の場合も要予約。

個人向けガイド付きツアー

フランス語:10:3​​0〜16:30土曜日/英語:月曜日と火曜日14:00

※ともに事前に要予約

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ポルト・モリトーの場所、行き方、アクセス

メトロ10号線「Porte d’Auteuil」より徒歩10分(約800m)
メトロ9号線「Michel-Ange Molitoror」より徒歩12分(約850m)

有名なコンコルド広場やオペラ座(ガルニエ)などパリ市内中心の観光地からも遠くはありませんが、アクセス(地下鉄利用)や道路事情でパリ中心部から約40~50分ほどかかります。

アクセス(財団HPより/フランス語のみ)

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