建築家ル・コルビュジエの中で最も有名な建築、代表作の一つと言われるのが南フランスにあるマルセイユのユニテダビタシオン。
ル・コルビュジエの理念を託した集大成と言えるこの集合住宅は、コルビュジエらしさを強く感じられる場所です。
マルセイユのユニテ・ダビタシオンの特徴や見学についてまとめました。
ユニテダビタシオンの概要
ユニテ・ダビタシオン(仏:Unité d‘Habitation)とは、建築家ル・コルビュジエが設計した一連の集合住宅。
フランス語で「住居の統一体」と「住居の単位」といった意味があるそう。
ル・コルビジェは生涯で5つのユニテ・ダビタシオンを設計しました。
1)1945年-1952年 マルセイユ Marseille (フランス)
2)1952年 ルゼ(ナント) Rezé, Nantes (フランス)
3)1956年 ブリエ=アン=フォレ Briey-en-Forêt (フランス)
4)1957年 ハンザ(ベルリン) Berlin-Hansaviertel, Berlin
5)1960年 フィルミニ Firminy (フランス)
その中でもマルセイユのユニテ・ダビタシオン(以下「ユニテ」と記載)は、ル・コルビュジエが提唱した「輝く都市」という都市計画の概念を集合住宅として実現したと言われています。
生活一体型の空間として構想されており、コルビュジエが提唱した寸法概念「モデュロール」の適用が、全作品のなかでも最も徹底されている建築の一つです。
ユニテ・ダビタシオンの外観
約3.5ヘクタールの敷地に長さ165m×幅24m×高さ56mの建物となっています。
8階建てで最大で約337戸、約1600人が暮らすことができる集合住宅だそうです。
建物の完成は1952年(1945年-1952年建造)ですが、現在も住民が住み、そのうちの3階、4階部分の2フロアは一般の人も宿泊可能なホテルとして利用されています。
ホテル「ル・コルビジエ(Le Corbusier)」という名前で営業しており、ここでの宿泊体験も素晴らしいです。
まず最初の公共エリアがこちらです。
打ち放しのコンクリートの壁面。近くで見ると、結構、荒々しい大ざっぱな仕上げ。
建物の正面ファサードに「モデュロール」の彫刻。
壁の両側に彫られている人の形をした絵。
モデュロールはル・コルビュジェが発明、提唱した基準寸法ですね。
日本で言うところの「尺」とか「間」とか。
これのことです。
内部のロビーから見た1階のピロティ。
どっしりとしてマッシブそのもの。
その荒々しく太い柱は「太古の巨石文明の遺跡」みたいですね。
建物をささえる巨大柱の接合部。建造後、60年以上たっています。
ユニテ・ダビタシオンの内部、公共エリア
ロビーまわり
住民やホテルの宿泊客が必ず通る、1階のロビーフロアです。
光の取り入れ方、赤と青の色使いがコルビュジェぽいです。
1階には守衛(門番)もあります。
見学の際はあらかじめガイドツアーを予約してゆきましょう!
屋上階
写真は5月。空の青色が映えます。フランスの5月は天候も安定して、訪問するのに良い季節です。
南フランスでは同じ晴天でも、5月頃の空と10月頃の秋の空で違った空気感です。
10月もきれいです。
見ていると何か似ているものを思い出します。
そう、豪華客船!・・です。
デッキ(操舵室)、プール、煙突・・・
ル・コルビュジエは、実際のところ、船をイメージしてデザインしたとも言われています。
この屋上は、建物内の保育園の遊びば、住民の体育館、プールとして利用されています。
コルビュジエが目指した生活一体型の空間が、こういうところにも表れていますね。
公共スペース
3階のホテルの隣にあるパン屋さん。朝早くからオープンしています。
マルセイユのユニテ・ダビタシオンの竣工当時からの数少ない住人の方がお店をしています。
本屋さんも。郵便局や幼稚園もあります。
今では生活の必需を集合住宅内で満たすことは普通のことですが、1940年代当時としては画期的だったと言われます。
建物の中を「一つの街」のような機能を持たせようとしたル・コルビュジエの設計意図が伝わってきます。
マルセイユのユニテ・ダビタシオンと言えば、何はさておき「モデュロール」の話がメインですね。
館内にはそれが反映された箇所がたくさんあります。
こちらは住民の居住フロア。
黄色い郵便ポストが目を引きます。
ユニテ・ダビタシオンの住居
居住スペース(メゾネットタイプ)
住戸はメゾネットタイプ(1住戸が2層以上で構成される住宅構造)となっています。
シャルロット・ペリアンやジ ャン・プルーヴェとの協働による家具も見どころです。
メゾネットの下の部分。
バルコニーからの眺め。東向きです。
キッチンの調理器具用の棚はシャルロット・ペリアンによるデザイン。
メゾネットの上へ。
ロフト風ですが、このスペースより手前は下と同じ広さがあり、一家4人で暮らすのに必要十分な広さ。
子ども部屋やバス、トイレなど、とても機能的に設計になっています。
実際の居住者の家の中(ファミリー用)
実際に住んでいる住民の方に部屋を見せてもらいました。
ロフトから下を見たところ。
調理具の置き方が面白いですね。
「シャルロット・ペリアンのデザインです!」と住民のかたが誇らしげに語っていました。
キッチンは小さいスペースながら、とても機能的にできています。
同じ場所に居ながらにして、「すべてが手が届く範囲にあり、料理をする際にとても便利なのです」とのお話でした。
ユニテ ダビタシオンの入場見学情報
施設側の都合により、開閉館、料金、見学方法は予告なく変わることがあります。
実際の訪問、予約にあたっては、下記の公式サイト等で必ず最新情報をご確認の上、お出かけ下さい。
ホテルに宿泊せずに見学
現在も住民が多数住んでおり、1階ロビーに守衛もあり、2階より上は、原則、住民以外立ち入ることができません。
宿泊をせずに内部見学を希望の場合、定期的なガイド付きツアー(フランス語又は英語)へ申し込む方法となります。
実際に住民が住んでいる部屋は見学できる場合とそうでない場合(住民の状況次第)があるようです。
予約はマルセイユの市の政府観光局のサイトで受けています(追記:新型コロナ禍以降、休止状態)。
以下の記載があります。
≪ガイド付き見学ツアーの実施曜日と時間帯≫
月曜日から土曜日の午後2時~と午後4時~(フランス語)
土曜日の午前10時~(英語とフランス語)
料金:10ユーロ/大人、5ユーロ/子供(5〜11歳)
見学ツアーは約2時間。実施の48時間前、または、定員に達し次第、締め切り。
キャンセルができません(一度、支払ったら返金なし=チケット買取式)
なお、10名以上の団体の場合、下記とは別途、ガイド付き見学ツアーの予約を受け付けているようです。
予約サイトの[BOOK ONLINE]のボタンの下に団体予約用のメールアドレスが記載されています。
ホテルに宿泊して見学
マルセイユのユニテ・ダビタシオンでは宿泊も可能です。
建物の一部をホテル「ル・コルビュジエ」として運営しており、宿泊するのはとても良い体験になります。
そして、宿泊者はユニテ・ダビタシオン内部は自由に見学ができます。
屋上は21時頃~翌朝6時半頃まで施錠されています。
「住民の部屋内部の見学」を希望する場合、事前にホテルへ申し入れ、可能か問合せが必要です。
日付や時間帯によって、部屋を見せてくれる住民の状況次第で可否を決めている決まるようです。
公式サイトを開いて下の方へスクロールしてゆくと、右側にContactフォームがあります。
そこで「Other」のチェックボタンを選択すると要件の入力欄が表示されます。
英語かフランス語のみ対応可です。
※料金やチップは人数によっても異なるとのこと(要相談)。
ユニテ ダビタシオンの場所、行き方、アクセス
所在地:280, boulevard Michelet 13008 Marseille
フランス第2の都市、マルセイユの中心部にあります。
マルセイユ空港から約30km(車やバスで40~50分)。
鉄道「マルセイユ・サン・シャルル駅」から約5km。
地下鉄「M2」号線:「Rond-Point du Prado」駅下車、徒歩15分
※スーツケースをもっている場合、列車利用で「Gare de Marseille Saint Charles」に到着する場合は、タクシーの利用をおすすめします。
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