インド北部、チャンディーガルのル・コルビュジエ建築群(世界遺産)

この記事は建築家ル・コルビュジエが晩年にたずさわったインドでの建築、都市設計プロジェクトであるチャンディーガル(チャンディガール)や世界遺産建築に関心のある方へ向けて書かれています。その概要を簡単にお伝えし、いくつか代表建築をご紹介します。

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チャンディーガルについて

チャンディガールは、インド北西部、パンジャーブ州およびハリヤーナー州の州都。首都デリーから高速列車で約3時間半。飛行機では約1時間の場所にあります。

世界7か国に点在するル・コルビュジエの世界遺産をはじめとする多くの作品があり、また、ル・コルビュジエが構想した「都市計画」を実際に実現させた「世界で唯一の街」です。

さらにユネスコの世界遺産に登録されるほど価値のあるインド伝統建築も充実しています。

1947年のインド・パキスタン分離独立の際、パンジャーブ州もインドとパキスタンに分離し、かつての中心地ラーホールがパキスタン側になったため、新たに州都を建設する必要が生じ、生まれた町です。

当時すでに存在した別の都市を改造して州都とする案も検討されたが、改造に適切な都市がなく、その他の政治判断など諸事情により、新たに都市を建設することが決まりました。

その際に白羽の矢が立ったのが、ル・コルビュジエです。

チャンディーガルには、ル・コルビュジエ従兄弟で、仕事の重要なパートナーだったピエール・ジャンヌレの建築計画も残ります。

現在のチャンディガールの街

現在のチャンディガールの街(出典 http://takeme.co.in/chandigarh)

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チャンディーガルのル・コルビュジエ建築(世界遺産)

※地名(Chandigarh)の表記に関して、ル・コルビュジエがをフランス語の発音「シャンディガールと発音していたため、日本でも「チャンディガール」と呼ばれることがありますが、この記事では現地語の表記に従って「チャンディーガルと記載しています。

チャンディーガルの街は、グリッド状に配置された各セクター(区域)に分かれています。

その大きさは、1200m×800m(1.2km×0.8km)。それぞれのセクター内で「住む」「働く」「レジャー」の3つが完結するよう設計されました。

これはル・コルビュジエが唱えた「輝く都市」「アテネ憲章」の理論に基づいて実現したものと言え、チャンディーガルと同時期にフランスのマルセイユで建造された集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」とも通ずるコンセプトと言えます。

当初は47セクターが計画されましたが、その後に拡張し、現在は65ほどのセクターからなります。

▲ル・コルビュジエが都市計画を行った当時の街のコピー(出典元:建築倉庫ミュージアム「ル・コルビュジエ / チャンディガール展」)

キャピトル・コンプレックス

州の三権をつかさどる「州議事堂(1951-64年)」「高等裁判所(1951-55年)」「合同庁舎(1951-58年)」の施設を集約した地区がキャピトルと呼ばれ、ル・コルビュジエが設計したその一連の行政機関の建築は「キャピトル・コンプレックス」と呼ばれます。

キャピトル・コンプレックスはユネスコの世界遺産に登録されている17のコルビュジエ作品の一つです。

都市の北東部の大地が最も高くなっている部分に築かれた地区で、セクター1に集まっています。さらにそのエリアにはコルビュジエが造った「影の塔」「オープン・ハンド」という2つのモニュメントもあります。

この建築群は、非対称性の中に空間としての視覚的な均衡が求められる近代的な手法がコルビュジエにより探究されています。キャピトル・コンプレックスは、まさにヒマラヤ山脈を背景にした巨大な彫刻的な建築作品群とも言えます。

▲州議事堂、左の後方に見えるのが合同庁舎

▲合同庁舎(キャピトルコンプレックスの一部/チャンディーガル)

▲高等裁判所。大胆な色づかいはコルビュジエが他の建物でも多用している緑、黄色、赤。

▲影の塔。小規模だが、ル・コルビュジエの「光」に対する理論を実証した作品と言われる。

▲影の塔と高等裁判所

▲開いた手のモニュメント「オープン・ハンド・モニュメント」。チャンディーガルの都市理念である”Open to receive and give”というメッセージが込められている。

美術館(The Government Museum & Art Gallery)

セクター10には博物館や美術館が集まっています。コルビュジエ設計の美術館(The Government Museum&Art Gallery / 1952年)は、ル・コルビュジエが設計した世界で3つの美術館の一つ。他の2つは、東京の国立西洋美術館、アフマダバードのサンスカル・ケンドラ美術館です。

いずれもル・コルビュジエが唱えた「無限成長美術館」プロトタイプを実現したものです。

チャンディーガル建築博物館

美術館の隣に「チャンディーガル建築博物館」があり、設計図や建築模型など、チャンディーガルの都市設計に関する展示が集められています。

▲チャンディーガル建築博物館にて。コルビュジエのほか、ピエール・ジャンヌレ、マクスウェル・フライ&ジェーン夫妻の写真。

写真下のコメントには、「新しいチーム:ル・コルビュジエの非常に自信を持ったビジョン(先見性)も、いとこであるピエール・ジャンヌレやマクスウェル・フライ夫妻に支えられたに違いない」といったことが書かれていて、興味深いです。

チャンディガール計画は、インド人の弟子のドーシ(当時26歳)、故郷をともにするピエール・ジャンヌレ、英国の近代建築の先駆者マクスウェル・フライらの支えなくして、実現しなかったのかもしれない。

ル・コルビュジエセンター

ル・コルビュジエの写真や手紙、建築の写真が展示されています。画家でもあったコルビュジエの水彩画やスケッチも展示され、コルビュジエの多様な魅力に触れることができる場所です。

▲コルビュジエセンターにて

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その他の見所

ロック・ガーデン

コルビュジエとは直接関係していませんが、チャンディーガルには、その他にも建築・デザインやアートが好きな人にとって魅力的な場所があります。

その一つが廃材アートの庭園「ロック・ガーデン」は、アーティストであり建築家でもあったネック・チャンドが作った公園です。1950~70年代に都市化が進むとともに大量の廃材が出はじめ、それを利用して、陶器のかけらなどを壁に埋め込んで行ったのが始まり。とてもユーモラスな廃材アートが並んでいます。

ネック・チャンド・ファンデーションについて

▲ロック・ガーデンのタイルをはめ込んだ長いベンチは、バルセロナ(スペイン)にあるガウディの「グエル公園(下の写真)」のベンチのような風情。

 

▼▼参考文献▼▼

ル・コルビュジエのインド (建築文化シナジー)北田英治/ 彰国社(編)

▲写真を中心として、ル・コルビュジエの言葉、専門家による寄稿、対談などで編集された、しっかりとした装丁の本です(ソフトカバー)。現在は一般見学が不可となってしまったアフマダバードの「サラバイ邸」と「ショーダン邸」を特別取材した時の写真が貴重。

最新版 建築家ル・コルビュジエの教科書。 by Casa BRUTUS特別編集[書評]

世界遺産 ル・コルビュジエ作品群 by 山名善之[書評]

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