最新の現代建築の宝庫、台湾。日本の九州とほぼ同じくらいの面積ですが、日本を代表する伊東豊雄、安藤忠雄、青木淳をはじめ、OMA、ヴィンセント・カレボ―、アロヴァロ・シサなど、世界的に著名な建築家が多くの新しい建築を手がけています。
台北、台中、高雄のいずれにも魅力的な現代建築があり、それらの建築を見学する場合や建築ツアーを行う場合には、それらの所在の位置関係を知った上で旅行計画を練る必要があります。
その概要をまとめました。
台北で有名な近代建築・現代建築
台北舞台芸術センター(地図❶)
オランダの世界屈指の建築設計事務所、OMA(Office for Metropolitan Architecture)による設計。
球体が飛び出したようなインパクト抜群の外観が特徴の建物。球体部分が1500名収容のメインシアターとなっている。800人収容可能な2つの小さなキューブ型と組合せての使用が可能。
台北101(地図❷)
設計は李祖原(リー・ズーユェン、り そげん)。台北101のほか、高雄85ビルなどの超高層ビルを手がけている中華民国出身の建築家。
2004年の竣工時は世界一の高さだった。世界一の高さはドバイのブルジュ・ハリーファへ譲ったが、現在も台北のシンボルタワーである。
台北世界貿易センター広場(地図❸)
1985年、台北世界貿易センターができた当初の広場を伊東豊雄の設計により改修。
デザインは円形と螺旋の形を組み合わせた花びらをイメージしている。
陶朱隠園(地図❹)
陶朱隠園の現地語の発音は「タオジュ・インエン」。
設計は次世代・生態系建築で注目の若手、ベルギー出身の建築家ヴィンセント・カレボー(Vincent Callebaut/1977年5月27日-)。
地球温暖化防止と快適な居住空間を兼ね備えた都市生活者の理想的住宅で、台北の新しいランドマーク。
松山文創ビル(地図❺)
松山文創ビルは、日本統治時代に建設された煙草工場の跡地にできた公園の一角にある14階建てのビル。
設計は伊東豊雄。商業施設、オフィス、ホテル、コンサートホール、シネマなどが含まれる複合施設。
建物内のエリステホテルの図書ラウンジ(上の写真)は、一見の価値あり。
濱江多目的センター(地図❻)
濱江多目的センターは、青木淳の設計。現地大手ディベロッパー「忠泰建設」の従業員向け福利厚生施設。
熊谷組の台湾現地法人の華熊営造により、厳格な品質管理が実施され、特徴的なデザインが実現している。
華熊営造は2004年の完成当時に世界一の高さだった「台北101」をはじめ、台湾国内で数々の実績を積み重ねてきている。
台湾大学社会科学棟(地図❼)
伊東豊雄設計。2013年に完成。建物は平屋の図書館棟と、八層の教室棟で構成されている。
建物の配置、設計の際に考慮された周辺のコンテクストが秀逸と言われている。
桃園空港線「台北駅」・台北駅地区再開発計画(地図❽)
槇総合計画事務所(槇文彦)による再開発計画。台北駅と桃園国際空港を直結する高速鉄道の建設計画に伴い、2005年7月に国際コンペで選定された。
広大な47haの敷地に、空港線地下駅と商業施設、オフィス、ホテルなどの複合高層建築に加え、周囲の歴史的建造物保存をふまえた景観デザインとなっている。
Taipei Roofs(地図❾)
平田晃久設計。現地語では、富富話合(フーフーホァハァ)。コンセプトは「樹木のように風が通り抜けるバルコニー」。
台北を代表する商業エリア、中山駅近くに位置する地上12階、地下3階の分譲集合住宅。
法鼓山の農禅寺(地図❿)
法鼓山(ほっくさん)は、台湾の仏教系団体。農禅寺は1971年に創立。
台湾では珍しい近代的なデザインの寺院。「花は空に、月は水に」という意味が込められた水月池には水面とつながるようにして本殿が浮かび上がる。
蘭陽博物館(地図⓫)
台北市の東へ車で約1時間。宜蘭県(ぎらん)の蘭陽博物館(ランヤン・ミュージアム)。
設計は台北出身の建築家、姚 仁喜(ヤオ・レンシー/1951年12月6日-)。
姚 仁喜は台湾での数多くの公共建築を手がけているほか、東京の日本橋コレドにある台湾の大手書店・雑貨チェーン「誠品生活」の店内設計を務めている。
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台中で有名な近代建築・現代建築
東海大学チャペル(地図❶)
中国系アメリカ人建築家、イオ・ミン・ペイ(貝津銘=Ieoh Ming Pei/1917年4月26日-2019年5月16日)の設計。
台湾のキリスト教系大学の礼拝堂で、柱を1本も使わず、屋根そのものが建築自体を支える仕組みで作られている。
イオ・ミン・ペイは、1983年には建築界のノーベル賞とも称さるプリツカー賞受賞。パリの ルーヴル美術館のガラスピラミッドを設計した建築家としても広く知られている。
台中オペラハウス(地図❷)
伊東豊雄の設計。台湾には数多く点在する伊東豊雄設計の中でも代表的なプロジェクト。
2016年9月、2005年の入札から約11年の歳月を経てオープンした。
内部は3つの劇場で構成され、最も大きい大劇院は2007席を収容する巨大な劇場。
台中円形野外劇場 RIBBONs(地図❸)
設計は渡辺誠。
台中市民の憩いの場、文心森林公園内に建つ特徴的なフォルムの野外劇場。2009年に竣工。
柔らかい曲線を描くリボンのようなエレガントさのある白い屋根は、中国の伝統舞踊であるリボンダンスをモチーフにしている。
亜州大学現代美術館(地図❹)
台湾の亜洲大学が運営する美術館。プリツカー賞受賞者の安藤忠雄が設計を手がけ、2013年10月24日にオープン。
三角形の構造をした3階建ての同美術館は、台湾そして亜州大学のキャンパス内において、安藤が初めて手がけた建物。
台豊ゴルフクラブ(地図❺)
台豊ゴルフ場は、1964年に設立の台湾大手のガラス会社、台玻集団(TAIWANGLASS)の理事長・林玉嘉氏により建造。
新しいクラブハウス(通称:シザ会館)は、1992年にプリツカー賞を受賞したポルトガル人建築家、アルヴァロ・シサが設計(1933年6月25日~)。
アルヴァロ・シサは、ドイツの「ヴィトラ・キャンパス」を設計した建築家として有名。
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高雄で有名な近代建築・現代建築
国立高雄芸術センター(地図❶)
2010年4月に起工し、2018年10月に正式開業した。
設計を担当したのはオランダの建築設計事務所「メカノー(Mecanoo architecten)」。
台北の国家両庁院(1987年)、台中の台中国家歌劇院(2016年)に次いで台湾で3つ目の国立ホール。
高雄85ビル(地図❷)
地上85階地下5階の超高層ビル。設計者の李祖原は台湾のシンボル高層ビル「台北101」も設計している。
台北市の台北101が完成するまで台湾で最も高かったが、現在は台湾で2番目の高さ。
オフィスフロアを中心に、住宅フロア・商業フロア・ホテルフロアがあり、 74階の展望スペースからは高雄市内を360度見渡せる。
大立精品スタープレイス(地図❸)
地上10階・地下2階のデパート。オランダの建築グループ、UNスタジオ(UNStudio)が設計。
外壁一面特殊な材質の板を流線型に配置し、夜になるとそれらにLED照明があたり、上の写真の様な夜景をもたらす。
高雄KMRT中央公園駅(地図❹)
設計者のリチャード・ロジャース(Richard George Rogers, 1933年7月23日 - )はイタリアのフィレンツェで生まれ。ロンドンの建築学校で学び、イギリス国籍を取得した建築家。
モダニズム建築の影響を受けた機能主義的なデザイン、ハイテク志向の建築デザインで知られている。
2007年プリツカー賞受賞。代表的なプロジェクトとして、パリの「ポンピドゥー・センター」がある。
高雄KMRT美麗島駅(地図❺)
2008年に開業。高雄の地下鉄KMRTの2線が交差する乗換駅。地上部分のエントランスは日本の高松伸が設計。
駅コンコースにあるステンドガラスの作品「光之穹頂(The Dome of Light)」は、世界的に著名なイタリアのステンドグラスアートの芸術家、ナルシサス・クアグリアータ(Narcissus Quagliata)の作品。
台湾高鉄・左営駅(地図❻)
台湾高鉄(台湾高速鉄道)は台北~高雄を南北に縦断する高速鉄道。
左営駅は、高鉄の新幹線「高雄駅」と台鉄(台湾鉄路管理局)が一つの駅舎となっている。
駅舎は台湾の華興聯合建築師事務所が設計している。
高雄国家スタジアム(地図❼)
伊東豊雄の設計。2009年夏に開催された「第8回ワールドゲームズ」の主会場として計画された。
40,000席(仮設増設席を加えると55,000席)を収容。
本スタジアムの屋根には太陽光発電システムソーラーパネル(約6,500枚)が設置されており、21世紀の環境配慮型のスタジアムとして、高雄市が世界に発信する新たなシンボルとなっている。
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