台湾は現代建築の宝庫。日本人建築家が設計した建築物も多く、観光旅行だけでなく、台湾建築ツアーも人気があります。
台湾の高雄で見られる比較的新しい有名建築を集めました。
国立高雄芸術センター(設計:メカノー) 地図❶
中文表記:衛武営国家芸術文化中心
国立高雄芸術センターは、2010年4月に起工し、2018年10月正式開業。台湾最大規模の文化インフラ事業で、台北の国家両庁院(1987年)、台中の台中国家歌劇院(2016年)に次いで台湾で3つ目の国立ホール。
台湾でもっとも重要な文化的プロジェクトである同館は、台湾南部の芸術開発を推進するという使命のもと、軍事訓練基地だった敷地を変えて造られた。
このコンペで首位をとったのは、オランダのデルフトに拠点を置き、フランシーヌ・ホウベン女史が率いる建築設計事務所「メカノー(Mecanoo architecten)」。女性的な作風を感じさせる数々の現代建築で有名。
高雄中央駅の再開発(2023年完成予定)も手がけている。ちなみに高雄芸術センターのコンペの次点はザハ・ハディッド(イギリス)。3位は竹山聖(日本)であった。
中国の建築デザイン業界が主催する「Idea-Tops Award」のデジタル建築部門で2017年のベスト・アワードを受賞。英ガーディアン紙の2019年に訪れるべき世界40カ所のひとつに選出されている。世界最大の単一屋根で構成される劇場であることなどが選出理由に挙げられている。
敷地面積は99,000㎡、建築面積は33000㎡
2236席のオペラハウス、1981席のコンサートホール、1210席の劇場、434席のリサイタルホール、屋外劇場を有す。
(※)参考:東京ドーム建築面積:4.67万㎡、幕張メッセ建築面積:7.5万㎡
外観は高雄独自の造船業や公園内のガジュマルの木にインスピレーションを受けた有機的なフォルム。
巨大なキャノピー(庇、ひさし)は、なめらかな曲線により周囲の環境と融合し、キャノピーが地面と合流する大きな斜面には、屋外劇場が設けられている。
亜熱帯気候を念頭に設計されたオープンな構造は、風が広場を自由に吹き抜けることを可能にし、内部と外部がシームレスな構造。誰もが自由にアクセスできる機会をつくりだし、劇場と人々との間に親密な関係を生み出している。
高雄85ビル(設計:李祖原) 地図❷
中文表記: 高雄85大樓、英文表記: 85 Sky Tower
地上85階地下5階の超高層ビル。設計者の李祖原は台湾のシンボルとして有名な高層ビル「台北101」も設計している。
1994年着工1996年竣工、1997年に開業。高さは地上347m。アンテナを含めると378mで高雄市で最も高い建造物。台北市の台北101が完成するまで台湾で最も高かった。現在は台湾で2位。
オフィスフロアを中心に、住宅フロア・商業フロア・ホテルフロアがあり、37 - 85階には5つ星ホテルの君鴻國際酒店(85 Sky Tower Hotel)が入居。 74階の展望スペースからは高雄市内を360度見渡せる。
大立精品スタープレイス(設計:UNスタジオ) 地図❸
五福路と中華路が交わるロータリーの南西角に建つ、地上10階・地下2階のデパート。オランダの建築グループ、UNスタジオ(UNStudio)が設計。
UNスタジオは、オランダ生まれの二人の建築家、ベン・ファン・ベルケル(Ben van Berkel, 1957年-)とカロリン・ボス(Caroline Bos, 1959年-)により、1998年に設立。建築や都市開発、インフラストラクチャー事業に特化した活動を展開。
日本での作品はまだないが、横浜港大さん橋国際客船ターミナル(通称大さん橋)の設計競技で第2位を獲得している。
外壁一面特殊な材質の板を流線型に配置し、夜になるとそれらにLED照明があたり、上の写真の様な夜景をもたらす。照明の色も赤、黄、緑、青と常に変化しながら光っている。
高雄KMRT中央公園駅(設計:リチャード・ロジャース) 地図❹
地下鉄(KMRT)「中央公園駅」は高雄を南北に走るMRTの路線Red Lineの駅。
公園内のメインエントランスは、少ない鋼管で屋根を支えているため、屋根の浮遊感がある。その鋼管は1支点から放射状に4本伸び、ピン支承となっている。
設計者のリチャード・ロジャース(Richard George Rogers, 1933年7月23日 - )はイタリアのフィレンツェで生まれ、ロンドンの建築学校で学び、イギリス国籍を取得した建築家。モダニズム建築の影響を受けた機能主義的なデザイン、ハイテク志向の建築デザインで知られている。
2007年プリツカー賞受賞。代表的なプロジェクトとして、パリの「ポンピドゥー・センター」がある。
船底のように曲面を帯びた天蓋のデザインは、自然光を地下に引き込む仕掛けとなっている。
地上と地下を繋ぐエスカレーターの間に水の滝を流すことで、地下へのアプローチを活気づけている。
高雄KMRT美麗島駅(設計:高松伸) 地図❺
2008年に開業。高雄の地下鉄KMRTの2線が交差する乗換駅。
日本の建築家・高松伸の設計は、地上部分のエントランス。もともとここは、台湾の歴史上、民主化運動による美麗島事件が起きた重要な場所である。
駅コンコースにあるステンドガラスの作品「光之穹頂(The Dome of Light)」は、世界的に著名なイタリアのステンドグラスアートの芸術家、ナルシサス・クアグリアータ(Narcissus Quagliata)の作品。
台湾高鉄・左営駅(設計:華興聯合建築師事務所) 地図❻
台湾高鉄(台湾高速鉄道)は台北~高雄を南北に縦断する高速鉄道。
左営駅は、高鉄の新幹線「高雄駅」と台鉄(台湾鉄路管理局)が一つの駅舎となっている。
駅舎は台湾の華興聯合建築師事務所が設計。台湾ゼネコン大陸工程と日本のゼネコン大成建設によるJVにより施工された。
高雄国家スタジアム(設計:伊東豊雄) 地図❼
中文表記:高雄國家體育場
高雄国家スタジアムは、2009年夏に開催された「第8回ワールドゲームズ」の主会場として計画された。40,000席(仮設増設席を加えると55,000席)を収容。
陸上競技(IAAF公認400mトラック)、サッカー(FIFA公認フィールド)の他、コンサート、エキシビションなど様々なイベントに利用される多目的施設。
本スタジアムの屋根には太陽光発電システムソーラーパネル(約6,500枚)が設置されており、21世紀の環境配慮型のスタジアムとして、高雄市が世界に発信する新たなシンボルである。
本競技場は設計と施工(design&build)を合わせた形のコンペとなり、台湾の著名なデベロッパーである互助營造が主体となり、竹中工務店とジョイントして、設計は建築家の伊東豊雄が行い、台湾の劉培森建築師事務所も合同してコンペを通過した。
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