近代建築の巨匠、ル・コルビュジエの代表作と言えば、フランスのパリの「サヴォア邸」。
一見、ただの四角い建物にしか見えないこの建築。
今日に至るすべての近代建築のエッセンスが詰め込まれ、建築が好きな人なら必ず一度は見たいと思う住宅。
ユネスコの世界遺産にも登録されている偉大なサヴォア邸を紹介。
※最初に少し建築用語が出ますが、あとは簡単な言葉で書いています。最後に見学やアクセス情報も!
サヴォア邸(世界遺産)の概要と特徴
【世界遺産】サヴォア邸(Villa Savoye,Poissy) 工期:1928~1931年
保険・証券会社を経営した裕福なサヴォア家のためにル・コルビュジエが設計した邸宅。
20世紀の住宅の最高作品の一つで、フランスの歴史的建築物に指定されています。
サヴォア邸では「ピロティ」「屋上庭園」「自由な平面」「独立骨組みによる水平連続窓」「自由な立面」というル・コルビジエが提唱した「近代建築の五原則(新しい建築のための5つの要点)」のすべてが実現したシンボル的存在。
今日の鉄筋コンクリートやガラス材を使った近現代建築の基礎となったものです。
サヴォア家は主に週末を過ごす場所として使用し、1940年まで住んだとのこと。
その後、第2次世界大戦中には干し草置き場として使用されたり、ドイツ軍やアメリカ軍の兵士による使用などで荒廃状態に。
一度は崩壊の危機に見舞われたものの、ル・コルビジェの友人で、当時フランスの文化大臣だった元作家のアンドレ・マルローにより修復保存。
もとの姿を取り戻すことができました。
サヴォア邸の図面、平面図、間取り、寸法データ
サヴォア邸の図面(平面図、立体図、断面図)を探したところ、外国のサイトですが、2つほどおすすめのものが見つかりました。
以下のサイトはニカラグア(中米)の建築家が起こしたPLANですが、平面図、断面図、立体図とも充実。「教育目的ならPDFをご自由に無料ダウンロードどうぞ」とあります。
キッチンや植物の配置など、かなり細かく描かれています。 https://www.behance.net/gallery/85012739/Villa-Savoye-LeCorbusier You can download PDF files for educational purposes for free hereの部分をクリックすると、図面は「.rar」のファイル形式でDROP BOXの中に入っていますが、rarを解凍して使用するには少し手間がかかります。 上のURLリンクを開いたら、画像の上で右クリックしてjpg形式で保存するのが速いと思います。 図面提供者 Kenneth Gadea氏)のサイトはこちら |
もう一つがこちら。
WikiArquitecturaという建築版のウィキペディアのようなサイトで、建築写真やプラン(PLAN)が掲載されています。3Dなど上のサイトにないものがあります。
https://en.wikiarquitectura.com/building/villa-savoye/(ページの右側に図面) このサイトでは、他のコルビュジエ建築のプロジェクトも掲載されています。 ≫ WikiArquitecturaのル・コルビュジエ作品集はこちら |
ル コルビジェ:サヴォワ邸の外観
見学は内部を含め、およそ1時間くらいがちょうど良いのでないかと思います。
7ヘクタールという広大な敷地の中、セーヌ川を見下ろす森に囲まれた丘に建てられています。
「田舎の上品な風景を楽しめる週末住宅」というのが、施主であるサヴォア夫妻からの要望でした。
依頼はほぼ「丸投げ」のような状態だったとか。
ル・コルビュジエは洗練されたエリートのための、規格化された住宅というイメージで取り組み、「近代建築の5原則」を実現させるもってこいの機会と捉えていたそう(結果として見積の2倍の費用がかかった)。
1フロアは約 400㎡。内部は明るく、広々とした解放感に満ちています。
縦横比ほぼ同じ、シンメトリーに近いが、若干の縦長(横長)のプラン。
ルコルビュジェは「家(サヴォア邸)は、何も妨げずにオブジェのように芝生の上に置かれている」と称しています。
北側の玄関ホール。道路沿いの門から敷地に入って反対側にあたる。
白い幾何学的な四角い箱のような建物が細いピロティによって持ち上げられています。
柱の上に乗った箱のような構造は、今日、至る場所で見かけるピロティの先がけ。
敷地に入り、建物をぐるりと周って内部へ入り、屋上テラスに至る。
建物の入口玄関と反対面。
サヴォワ邸の内観(内部)
1階から2階へ
内装は白が基調。手すりはグレーのリノリウム製(亜麻仁油とゴムをベースとしたコーティング)。
なだらかに2階へと続いてゆく感じです。
ル・コルビュジエが大切にした空間を連続的に体験する「建築的プロムナード(散歩道)」が構成されている場所。
スロープ、螺旋階段、トップライト、ピクチャーウィンドーなど、 ル・コルビュジエが提唱した建築言語の多くが建物内で実現されています。
当時、フランスで標準的だった建築様式(分厚い壁に小さな窓の薄暗い部屋)とは対照的に、明るく清潔で合理的な住空間。
らせん階段は地下室まで続きます。
サヴォワ邸の2階
▲▼2階のテラス部分。家の周囲を取り囲んでいる窓と壁が景色を切り取るフレームのようになっています。
サヴォア夫妻の生活空間だった2階部分。
見学用に家具が配されていると、生活感まで感じられたかもしれませんが、この大きなガラス窓のサイズは画期的で、どんなインテリアよりも新しかったと想像します。
広く明るく開放的な一方、暖房が効きずらい、防音しずらいなどの課題(デメリット)もあったのだとか。
たしかにパリの冬は寒いので、サヴォア夫妻は戸惑った面があったでしょう。
浴室は主にゲストと息子たちのもので、2つの入口から入ることができるもの。
サヴォワ邸3階(屋上庭園)
建築的プロムナード(建築的散歩道)の終着地である屋上テラスの「窓」は、サヴォア夫妻の自動車の窓を参照したものだそう。
このプロムナードの中心になっているのがスロープ。
スロープが家の真ん中にあることで建物の強度に影響が生じ、漏水の原因にもなったとか。
完成後ほどなく雨漏りが始まり、修繕を繰り返すことになり、メンテナンスにもお金がとてもかかったと言われています。
屋上のサンルームに設けられた大きな窓。セーヌ川の方向をのぞむアングル。
サンルーム。風よけの壁でデザインされ、曲線は1階部分の曲線に呼応しているのだそう。
サヴォワ邸の庭師小屋も世界遺産
入口に入ってすぐ右側。この小さな物おき小屋のような建物も、実は世界遺産!!
ユネスコの世界遺産リストには「サヴォア邸と庭師小屋」とあります。
管理人兼庭師のために作られたもので、大きな邸宅と対をなす「最小限住宅」の実践例となっています。
裏の意味として、この対比は富者と貧者の対比を意味し、ル・コルビュジェの実践が「万人」に向けられたもの、万人に通ずるものであることを示しているのだそうです。
サヴォア邸:入場見学情報
サボワ邸の施設側の都合で、開閉館、料金、見学方法は予告なく変わることがあります。
実際の訪問、予約にあたっては、下記の公式サイト等で必ず最新情報を確認の上、お出かけ下さい。
サヴォワ邸の営業曜日・時間・料金
閉館日:月曜日および下記の日付
5月1日(メーデー)、11月1日・11日、12月25日~1月1日
営業時間
1月~4月および9月~12月24日は10:00-17:00
5月~8月:10:00-18:00
入場締切り時間は閉館時間の20分前
料金:8ユーロ
※館内には関連グッズを販売する売店もあります。
サヴォワ邸:場所、行き方、アクセス
所在地:82, rue de Villiers, 78300 PoissyPh
RERのA線、Poissy(ポワシー)下車(パリから約30分)。ポワシー駅より徒歩で約20分。
ポワシー駅からバス利用の場合:50番のLa Coudraie行きのバス乗車。Villa Savoye停留所で下車。
サボア邸:関連情報
サヴォア邸 公式サイト
よろしければ、こちらもどうぞ。
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