2018年に六本木ヒルズの森美術館で開催された「建築の日本」展は、平日にもかかわらず、来場者がひっきりなし。。
外国人や学生とみられる入場者が多かったことも印象的な展示会でした。
日本の建築が、世界や幅広い層に関心の高いものであることをうかがわせます。
展示会の感想、図録購入後の感想を紹介します。
建築の日本「その遺伝子がもたらすもの」展示構成
展示は、古くは縄文時代の住居から最新の現代建築まで、100プロジェクトを総数400点を超える展示資料で紹介されています。
9つのテーマに分かれた各部屋を、そこそこしっかり見て1時間くらいはかかり、ミュージアムショップなどを含めて、2時間くらい長居しました。
建築の日本「その遺伝子がもたらすもの」の見どころ
▲千利休 茶室 国宝「待庵」原寸大模型/わずか二畳の芸術的「わび」の空間
▲丹下健三氏 自邸模型▼
一般的な写真パネルでの解説以外にも、会津さざえ堂、出雲大社本殿の木製模型、千利休の茶室「待庵」の原寸大の復元、丹下健三さん自邸の巨大模型、実物の近代名作家具に座れるラウンジスペースなどがあり、飽きない構成になっています。
▲2015年ミラノ博覧会・日本館で使った木組みインフィニティを再現
特に印象に残った展示「8.発見された日本」
この展示会は「建築の日本:その遺伝子がもたらすもの」というメインタイトルに「世界が魅せられた日本建築、その本質に迫る!」というサブタイトルがついています。
世界で注目されている日本建築の本質にせまり、日本建築が各国建築にあたえた影響、それが広がっていった過程やキーマン(建築家)についてスポットがあてられています。
私が一番印象に残った展示は「8.発見された日本」。
ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライトなどに代表されるモダニズムの巨匠たちも、日本建築の素晴らしさを気づき、称えています。
▲モダニズムの名作家具で構成されたブックラウンジ
丹下健三研究室《香川県庁舎執務室間仕切り棚》1955-58年 ほか
丹下健三、谷口吉生、安藤忠雄、妹島和世など多くの日本人建築家たちが国際的に高い評価を得ているのは、古代からの豊かな伝統を礎とした日本建築をバックグランドとして、活躍してきたからということでしょうか。
ル・コルビュジエの大切な理論である標準化と規格化について、当時私たちはまだ実現できていなかった。しかし、日本家屋にはそれが当然のように行われているのを目にすることができた。(フランスの建築家・デザイナー:シャルロット・ペリアン)
私は昔の日本の住まいが私自身が作り上げようとしていた近代的な標準化の完全な例であることを知った。(フランク・ロイド・ライト:2000年「ライト自伝-ある芸術の展開」)
祖先への郷愁としてではなく、むしろ輝かしい構想力にみちた現代的な象徴として、民家を保存すべきである。(伊藤ていじ:1963年「民家は生きていた」)
建築の日本:図録・カタログ本(作品リスト)感想
展示会の内容が充実していたので、図録カタログ(3400円)も購入しました。
図録は厚さ約2.5cm、A4サイズくらいのソフトカバーです。
図録の内容は基本的に展示物に準じた構成です(展示会と同じ内容がカタログ本の中に再現されています)。
もちろん作品リストも完全な形で網羅されています。
展示会が終了して1年以上たって読み返しても、新しい発見があります。
展示会ではすべての展示物に英語でのキャプションや解説が付いていましたが、図録にも英訳が併記されています。
図録はそのままで外国人にもわかる内容になっていますが、日本人でも「英語で日本建築のことを説明」したりする際など、表現に役立つかと思います。
文字サイズは、若干小さめと感じましたが、内容は「永久保存版」にしたいと思うほどです。
この内容で3400円なら、決して高くはなく、長く残る「名図録」になることでしょう。
図録カタログはAmazonなど、インターネットで購入することもできます。何年か経ち、在庫がなくなると、中古(古本)での入手になるかもしれません。