名建築とは何か?について【書籍紹介】

先日、森美術館の「建築の日本:その遺伝子がもたらすもの」の書籍販売コーナーで入手した「山梨式 名建築の条件」を拝読。日建設計の山梨知彦先生の著作。

これが、本当に勉強になっております。

「名建築(名作建築)」と言って、すぐに思い浮かぶのは近代建築の巨匠、ル・コルビュジエであり、ライトであり、ミースあたり。しかし、最新の現代建築、古代建築まで広げれば、その数は限りない。

もともとこの書籍企画(書籍化のきっかけ)は、日経アーキテクチュア誌から「名建築について連載しませんか?」という話があり、連載をはじめたことがきっかけだそう。

その際、山梨先生は「名建築は何か?」、どう定義づければよいかという自分自身への問いかけからスタートしたという。

山梨先生はこの著作の中で、主に、1950~1970年代の日本の建築界をリードしてきた作品群を取り上げておられる。絶対的な名建築がこの時代に多いということでなく、ご自身の生まれ育った時代の背景や影響からして、山梨先生の建築的関心を引きつけている作品がこの時代に多いからではないかと、ご自身で分析をなさっておられます。

この書籍で勉強になったのが、最新現代技術ももとにした「構造、設計」という視点での解説です。

建築作品を見学に行くことをテーマにした「旅づくり(旅行企画)」の際は、主に建築作品の地域、時代的・文化的背景との接点一人の建築家(アーティスト的な)のヒストリーが主な視点となるので、普段、構造、設計という観点で建築をとらえる機会は少ない。構造設計という視点で見ると、建築がより深遠な、広い世界としてとらえられてきます。

取り上げられている20の作品は、それぞれに興味深く、独自の視点が新鮮なのですが、感銘を受けたのは、山梨先生が「自分にとって名建築とはなにか?」「自分はそこから何を学ぶことができるか」を明らかにするための視点です。それは「統合」「原理」「「空間」「時間」「素材」「人間」「場所」という7つの視点。

これらが普遍的、絶対的に「名建築か否か」を語る視点か否か知るところでないが、ご自身がその判断を下す際には、知らず知らずのうちの、これらの7つを根拠にしていたといいます。

たとえば「原理」というキーワードに関していえば、通常は普遍的な原則を示す言葉として使われることは多いが、この中では、むしろ「アルゴリズム」のように、「建築家自身がモノを作る上で想定しているルール」として捉えられています。

そして、山梨先生は、この連載をとおして「自分にとっての名建築とは何か?」ということへのヒントをわずかながらに掴んだ、ということに触れられておられます。

それは、旅づくりと建築(建築家)との関係においても、大いなるヒントになります。

▲銀座ソニービルの跡地(2018年6月現在:建て替え中)/その奥はエルメスのビル

書籍で取り上げられた名建築のいくつかは、存続の危機にさらされていることにも触れられているが、旧ソニービルの、ショールームでありながら、いかにもでない自然な感じや不思議な居心地の良さは、今でも忘れない。残念ではあるが、企業や時代のいろんな事情を考えると、新しく出来上がる「銀座ソニーパーク」に期待したい。

▼山梨知彦先生著作(Amazonより)▼